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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

これは退っ引させぬ釘鎹である。お師匠さんを志願する丈けに牧野さんも筋で釣ることを心得ている。二人のお弟子さんは爾来二年間四君子をやっているが、一向上達しない。しかし筋が好いから失望もしない。頭で描くと見えて葱のような蘭が出来る。

碁に於ても千吉君は筋が好かった。お師匠さんの関君は決して強い碁打ちでない証拠に白を持つことより黒を持つことが多い。会社で一番打つという重役に五目置く。尤も本人は三目だと言っている。置くことは嫌いだが、置かせることは大好きだ。ところが笊の域を脱しない悲しさ、置き先は多いけれど置かせ先が至って尠い。そこで下手を養成する必要を年来感じていた。折からこの正月千吉君は関君のところへ年始に行った。請ぜられるまゝに上り込むと、主人公は同僚の長谷川君と対局していた。斯ういう場合千吉君は覚悟が好い。分っても分らなくても神妙に見物している。三局済んだ時――といっても、この程度の碁は暮の賃餅のように手っ取り早い。一面が二十分かそこらで片付く。朝から晩までに三十七面打ったなぞと言っているから、丁度それぐらいの勘定になる。兎に角三局目が終った時、長谷川君は、