轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

「あなた、今日で十一時が幾晩続くと思召しですか?」

「四晩さ」

と千吉君は平気で答えた。

「勘定していながら晩くなるんですか? 憎らしい!」

と安子さんは千吉君を抓った。この細君は真剣に怒ると良人を抓る癖がある。尤も結婚当初は爪を隠していたが、二年目から遠慮がなくなったのである。良人が又抓られると骨なしのようになって何でも言うことを聞くから、昨今はこれが有力な武器になっている。

「痛いよ。痛い!」

と訴えても、お里も八千代さんも最早寝静まっていた。

「絵のお稽古と一緒でこの頃は一週の中五晩お潰しになる上に日曜は朝から晩まででしょう? 余りじゃありませんか? そんなに家がお厭やなんですか?」

と安子さんは質問毎に抓った。

「痛いよ/\。これから少し慎むから堪忍しておくれ」

「少しじゃ困りますよ」

「大いに慎む。痛い!」

「初めのお約束通り一週に一回にして下さいよ。ねえ、あなた」

「引っ掻くのはおよしよ。傷がつくと会社へ行って笑われるじゃないか? 腹が立つなら抓っておくれ」

と千吉君は好い気なものだ。

「絵が一回に碁が一回ですけれど、一晩丈けは臨時を許して差上げます。宜いこと?」