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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页
長谷川君は六目だって言っていたぜ」
「それは一面手代りだから、六目になることもあるが、矢っ張り関君と同じことで四目は動かない」
「両方で主張するところが宜いんだね。好い娯楽さ。しかしあれは頭を使うだろう?」
「頭ばかりか、凝っと坐っているもんだから身体も疲れる」
「それが勝負事の欠点だね。一日働いた頭を又使うんだから休養にならない。そこへ行くと同じ坐っているんでも、謡曲は違う。胸を張って臍下丹田に力を込めているから、一番歌うと汗をかく。すっとして好い気持になるぜ」
「あれは静坐法みたいなものだからね」
「一種の腹式呼吸さ」
というような問答があった。しかし碁をやめさせることは到底困難と見極めた時、橋口君は攻撃の鋒先を絵の方へ向け始めた。
「絵は好いね。僕は習いたいと思うことがある」
とこの人は必ず先ず褒めてかゝる。
「始め給え。何なら僕に代って習ってくれ給え」
と千吉君は囲碁には興味があるけれど、南画は実際持て余している。
「厭やになったのかい、もう?」
「初めから然う進まなかったが、嫌いだとも言えないから、つい……」
「あれはナカ/\上達しまいね?」
「迚も駄目だ。米沢君ほど下地がないから」