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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
小さな字でイビキの説明がしてある。ミネは急に笑い出し、茶化すようにいった。
「何だ、鼻息の荒さなのね。女の鼻息におどろいたの、気のちっちゃい。」
二三日おくれて井川からも手紙がきた。当事者でない井川は野村のようにむき出しの言葉はなく、閑子は子供たちともうまくいっていたのだし、主婦としても気に入らぬというわけではないが、何としてもウマが合わないこと、そこで井川が、半年か一年家政婦をたのんだ気もちで気らくに暮してみたら何か拓ける道がないかとまでいったが、彼はまるで恐怖しているようだし、思うに彼は以前の結婚生活のワクの中でとじこもっているとしか考えられぬこと、そのからの中でしっかとちぢこまって新しいものの入りこむ余地がないという気がしたこと、それについて野村は意識してはいないだろうが、意識の外でたえず前の結婚と比較しているように思うこと。これは自分の片よった考えかもしれぬが、そんなわけだから、往来で木が倒れかかって災難をうけたとでも考えて、新しく立ち上ってくれとかいてあった。ミネは野村の手紙と一しょに、だまって閑子の針箱の上へおいた。とどめをさすような気もちだった。