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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

きれいな人は、とくね。」

素直によろこぶ閑子だった。ミネはこの素直さを貞子にしってもらいたい気さえした。貞子の前に出る閑子が、あまりにも暗く、重くるしいのを知っていたからだ。あれなら野村がいやに思うのも無理はないと、貞子は考えているだろう。ミネでさえもこのごろの閑子をみて、野村の気持に同感を持つことが多くなってきている。そして、そのことを閑子のために可哀そうに思う。姉にまで重たがられる女で、閑子はあったのだろうか。閑子のそうした一面がどこに根ざしているかをミネは考える。四十歳までひとりで暮してきた女、二十年もの間教壇に立って若い娘たちを教えてきた女、男女のいきさつにうとく、恋の手紙などおそらく一度もかかずに青春をやりすごした女、それを立派だと自信をもって暮してきた女、そこに問題の根本があるのかもしれない。単純なひとり暮しの中ではボロを出さずにいられた閑子が、急に四人の子の母となり、五十の男の妻となったのだ。教壇の上から二つの目で幾十人の顔をみおろして暮してきた閑子は、せまい家庭で十の目に見すえられることになった。無邪気な夫婦から出発して適度な間隔をおいて一人ずつ子供が殖えてゆき、その過程で夫も妻もだんだん複雑な父となり母となってゆく、その道筋を通らずに閑子は四人のしかも大きな子供の母となり、相手の職業も