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さいのひみつばこ

妻の秘密筥

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,212 字 · 25 页

青空文庫

才人五人組

才人五人組

「君達の群は一寸違っているね」

目のあるものは皆そう言って、敬意を表してくれる。

「一癖あるのが揃っている」

と課長が言ったそうだ。僕達も十把一からげの連中とは選を異にしている積りだ。同僚の多くは、寄ると触ると、Xの次の話をする。俸給の上らない不平をこぼす。他に能がない。そういうのに較べると、僕達は大いに違う。課長の言う通り、皆一癖も二癖もある。人数は五人だが、粒が揃っている。早分りのするようにこゝで閲歴を紹介して置こう。

自分のことから先に話すものでない。第一指は二科に二度入選した素人洋画家木寺君に屈すべきだろう。この男は○○伯爵の甥で、奥さんを◎◎子爵家から貰っている。八重さんといって、頗る美人だ。但し木寺君よりも二つ三つ年が多い。或富豪の放蕩息子のところへ嫁に行って離婚になったのを、慰藉料諸共、拝領したのだという噂がある。

「いや、その拝領した人が死んだものだから、木寺君にお鉢が廻って来たんだ。美人には美人だけれど、歴史がついている」

という評判だ。艶福家は兎角羨まれる。慰藉料ぐるみなら、艶福と同時に実利も占めている。美人の奥さんに対して、木寺君は寧ろ醜男だから、話題になり易い。