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さいのひみつばこ

妻の秘密筥

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,212 字 · 25 页

青空文庫

「あの光子さんにしてそうなら、他の女性は皆そうだろうと思う」

「それは極端だよ」

「いや、君達の奥さん方にしても、必ずしも君達が好きで嫁に来たんじゃないかも知れない。箪笥の中に秘密筥を持って来ていないとは限らないぜ」

「そんな心配は断然ない」

「と言って、知らぬは亭主ばかりなりさ」

懺悔の広瀬君が又絡んで来た。不図気がつくと、木寺君は卓子に両肱をついて顔を蔽うようにしていた。子爵令嬢で深窓の佳人にしろ、一度嫁いた人を貰っているのだから、こういう話は面白くないのだった。

「そんなことを言っていたら果しがないよ。男にも男の秘密がある。お互に有りのまゝを話して見給え。女房に胸倉を取られるぜ。ねえ、海野君、但馬君」

と僕は両名の注意を呼んだ。木寺君に気の毒で、この上、広瀬君に話して貰いたくなかったのである。

「僕はそんなことはない積りだよ」

と海野君が扱き下すように言った。

「僕も君と一緒にされちゃ困る。冗談は言っても、家内を欺くようなことはしない」

と但馬君もひどく改まって、僕を睨みつけた。僕は木寺君の為めに気を利かしたのだけれど、それが分らないのだから仕方がない。