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さいのひみつばこ

妻の秘密筥

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,212 字 · 25 页

青空文庫

それ/″\の探索

広瀬君が又喋り出してしまった。

「そう断言出来る両君は仕合せだよ。しかし僕は若し結婚すれば、女房を欺くことになる。光子さんとこう/\だったとは言えない。女性を欺くのも厭だけれど、女性に欺かれるのは尚お厭だから、これから先も独身で通す。以上は僕の懺悔だ。君達の奥さん方に秘密筥があるだろうから探して見給えという暗示でも何でもない。その点は何うぞ悪しからず……云々」

それ/″\の探索

会は土曜日の晩だった。日曜を一日置いて、月曜の昼、会社の食堂で顔が会った時、

「何うだったい?」

と広瀬君が僕に訊いた。

「何が?」

「奥さんの秘密筥さ」

「馬鹿な」

僕は妻の愛に自信があるから、広瀬君の冗談を一言で卻けてしまった。

「君のところ丈けは大丈夫だろうと思っていたが、木寺君を見給え」

「何処にいる?」

「あすこだ。海野君の隣りだ。少し顔色が悪いだろう?」

「うむ」

「女房の秘密筥が気になるんだ。しかし知っての通りの事情だから、あの男に丈けは諢われない。悪いことを言ってしまったと後から思ったよ」

「僕も気の毒で困った。しかし君があゝいうロマンスの持主とは驚いた」

「嘘だよ、あれは」

「えゝ?」