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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

」

とその手巾が目に障る。

「済まないのは私こそ。でもよく会場が抜けられましたな。」

「はい、色艶が悪いから、控所の茶屋で憩むように、と皆さんが、そう言って下さいましたから、好い都合に、点燈頃の混雑紛れに出ましたけれど、宅の車では悪うございますから、途中で辻待のを雇いますと、気が着きませんでしたが、それが貴下、片々蠣目のようで、その可恐らしい目で、時々振返っては、あの、幌の中を覗きましてね、私はどんなに気味が悪うござんしてしょう。やっとこの横町の角で下りて、まあ、御門まで参りましたけれども、もしかお客様でも有っては悪いから、と少時立っておりましたの。」

「お心づかい、お察し申します。」

と頭を下げて、

「島山さんの、お菅さんには。」

「今しがた参りました。あんなに遅くまで――こちら様に。」

「いいえ。」

「それでは道寄りをいたしましたのでございましょう。灯の点きます少し前に見えましたっけ、大勢の中でございますから、遠くに姿を見ましたばかりで、別に言も交わさないで、私は急いで出て参りましたので。」

「成程、いや、お茶も差上げませんで失礼ですが、手間が取れちゃまたお首尾が悪いと不可ません。