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あんごのしんにほんちり
安吾の新日本地理
03 伊達政宗の城へ乗込む――仙台の巻――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,085 字 · 48 页
座敷を一足でると、はりさけるような仙台弁で階下の帳場へ呼びかけて話をしている。これが仙台弁のききはじめだったが、全然わからないね。私も言葉が商売の文士であるし、生れは雪国の新潟で地域的には東北と通じないこともないから、仙台弁をきいても、だいたい判断できるだろうと思って旅立ったのである。とても、分らん。一言も分りません。
青葉山を降りてくるとき、お喋りしながら登ってくる十名ばかりの女学生とすれちがった。完全に一語も分らん。叫ぶ声まで、異様で、判断がつかないのである。私も自信を失って悲しかったね。文士だからねえ。言葉が商売なんだ。言葉と表情と場合とを綜合すれば、なんとか判断できるはずだと思っていたんだよ。ハッと思ってミッちゃんの言葉を書きとめておいたのを御紹介に及ぶと、
「ンだまア。ビッチラ、ビッチラ……」
あとは書きとめることもできない。意味は今もって分りません。全然一語も分らないのだから、一ツや二ツの言葉の意味をきいてみる気持にはなりませんよ。案内役の井上君は東北大学の出身、二年半仙台にいたのだから、なんとか判断はつくようだが、通訳がつとまるほどは分らないのである。