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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

卓連俊 先生に用があると言って肯かねえのだ。いま都合を訊いて来てやるから待っていろと言っても、あん畜生、おれを突き退けるようにして上って来ようとする――や! 来た、来た! 上って来やあがった!

鄭吉炳 あいつ、俺たちに白眼まれてることを知らないわけじゃあるまい。承知の上で押し掛けて来たとすると、スパイめ、何か魂胆があるかもしれないぞ。

李春華 燈火をつけましょうか。

クラシノフ (不安げに立って)いやいや、暗いほうがいいです。

朴鳳錫 上げちゃあまずい。よし。どんな用か、僕が行って会ってやる。

鄭吉炳 (李剛へ)僕も行ってみましょうか。

李剛 (苦笑して)そうしてくれたまえ。朴君は喧嘩っ早いから、ひとりじゃあ心配だよ。

朴鳳錫と鄭吉炳は、ドアを出て階段を駈け降りて行く。一同じっと聞耳を立てている。「何だ、何だ。」「何の用だ。ここは貴様の来るところじゃない!」などと二人の大声や跫音に混って、張首明の低い声が聞えて来る。

4

大東共報社の階下。民家の物置きにて、古家具、新聞雑誌、穀物の袋等積み重なり、手車なども引き込んである。そこここの床に食客たちが寝泊りするマトレスが敷いてある。