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ほうえいふんか
宝永噴火
岡本 かの子
「文学界」1940(昭和15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 页
美しい詩をつくり、美しい筆蹟を習って思を遣る。肉慾的のものとしては飲酒だけにすべてを籠めてしまったような形跡である。こういう弛緩の状態に在っては、慧鶴青年自身、積極的に情慾の満足に嚮わないまでも、他からの異性の誘惑には脆い筈なのだ。慧鶴にその事はなかったのか。是非、調べてみたい。
ここで、先決問題として、慧鶴その人の風姿容貌はどんなだったというと、かなり特色のある顔付きや骨柄の青年であったらしい。
慧鶴の最初剃髪した原駅の松蔭寺に遺っている木像や、白隠自身たびたび描いている自画像を見ても、大きく高い峯の鼻で、黒い眸の大きな眼を持っている。口はややこれらに負けるようだが、厚い唇はきっと結んでいる。骨組みはがっちりしていて、顴骨が特に秀でている。どうしても人中では目立つ派手な男性的な顔付きであったことが想像される。現実的でエネルギッシュな人体電気を放散させていたに違いあるまいが、一方宗教家に特有で、人間としては欠目のように思われる、あの、こまかい、なやましい、而かもそれ故にこそ魅力があり、いく度繰り返しても疲れを知らない恩愛痴情、恨み、嫉み、というような普通の人情の触手は生れつき退化し、それによって人と縺れ合うことはとかくに不得手だったらしい。