轻松读懂日语经典作品
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さむはし
寒橋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页
「――急に嫁のはなしでもあったんだろう」
時三はこう云っていた。
「――どうせ死ぬまでいる者じゃなし、いつかは出てゆくんだから、私の病気もおちついたところだしいいじゃないか」
伊兵衛もこう云うだけだった。お孝は多少にくらしいと思ったが、そのままにしておけないので、嫁にゆくゆかぬはともかく、かねて予算していただけの品物を買い揃え、それ相当の金も包んで、南千住の実家というのへ届けてやった。
半月ばかりして女中のはなしが出たが、子供でも生れるまでは用もないので、お孝は自分でやってゆくことにきめた。
「それにしてもへんねえ、あたし赤ちゃんが出来ない躯なのかしら」
「子供なんか急ぐことはないよ」
「だっていやなのよ、友達に会うときまってからかわれるんですもの、……あんまり仲がよすぎるんだとか、お迎えが激しすぎるんだとかって、ねえ、本当にそんなことってあるのかしら、仲がよすぎると、……あらいやだ、へんなこと云いだしちゃって、あたしどうかしてるわ」
「独りではしゃいで独りで赤くなってりゃあ世話あねえや」
「いいじゃないの、おたみがいなくなってから初めてしみじみした気持になれたんですもの、初めて夫婦さし向いって気持なんですもの、これで早く赤ちゃんが出来れば申し分ないんだけれど、……あたしどこか信心してみようかしら」