轻松读懂日语经典作品
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さむはし
寒橋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页
川上の佃島のほうに、舟で燃す火がぼっと霞んで、点々と五つ六つ見えた。白魚網だろう、そのあたりから水面を伝って、人の声がとぎれとぎれに聞えて来る。
「――おっ母さん」
お孝はそっと呼んだ。父親がそこに釣糸を垂れている、母が女中に茶や弁当を持たせて来て、父のそばへいって跼む。
――来なくってもいいのに、風邪でもひいたら困るじゃないか。
――でも寂しくって、……寝られなかったから来てみたのよ、お茶をあがったら。
――済まないな、ちょうど欲しいところだった、おまえそうしているならこれをちょっとひっかけているがいい。
――あらいいのよ、それじゃああんたが寒いわ。
父と母とのこんな会話が、現にそこでとり交わされているように、ありありと聞える気がした。父と母との穏やかな、まじりけのない温かな愛情、お互いに劬りあい相手に誠実であった愛情、……それがそのまま、寒橋の岸のその石のところに、そのまま現に残っている、二人の愛情は今でもそこに生きている、そこに、その石の上に、……お孝にはそれが眼に見えるように思えた。
「――おっ母さん、あたし苦しいの、生きているのが辛いのよ、ねえ、……おっ母さん、あたしどうしたらいいの」