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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页

青空文庫

わかりにくい形に表現することによって、何かしらたいしたものがそこにありそうに見せようとしている、のではないかと疑われてもしかたのないような仕事をしているのである。これは天然の深さと広さを忘れて人間の私を買いかぶり思い上がった浅はかな慢心の現われた結果であろう。ことしの二科会では特にひどくそういう気がして私にはとても不愉快であった。もっともその日は特に蒸し暑かったのに、ああいう、設計者が通風を忘れてこしらえた美術館であるためにそれがさらにいっそう蒸し暑く、その暑いための不愉快さが戸惑いをして壁面の絵のほうにぶつかって行ったせいもあるであろう。実際二科院展の開会日に蒸し暑くなかったという記憶のないのは不思議である。大正十二年の開会日は朝ひどい驟雨があって、それが晴れると蒸し暑くなって、竹の台の二科会場で十一時五十八分の地震に出会ったのであった。そうして宅へ帰ったら瓦が二三枚落ちて壁土が少しこぼれていたが、庭の葉鶏頭はおよそ天下に何事もなかったように真紅の葉を紺碧の空の光の下にかがやかしていたことであった。しかしその時刻にはもうあの恐ろしい前代未聞の火事の渦巻が下町一帯に広がりつつあった。