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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页
それにしても日々に増して行く書籍の将来はどうなるであろうか。毎日の新聞広告だけから推算しても一年間に現われる書物の数は数千あるいは万をもって数えるであろう。そうしてその増加率は年とともに増すとすれば遠からず地殻は書物の荷重に堪えかねて破壊し、大地震を起こして復讐を企てるかもしれない。そういう際にはセリュローズばかりでできた書籍は哀れな末路を遂げて、かえって石に刻した楔形文字が生き残るかもしれない。そうでなくとも、また暴虐な征服者の一炬によって灰にならなくとも、自然の誤りなき化学作用はいつかは確実に現在の書物のセリュローズをぼろぼろに分解してしまうであろう。
十年来むし込んでおいた和本を取り出してみたら全部が虫のコロニーとなって無数のトンネルが三次元的に貫通していた。はたき集めた虫を庭へほうり出すとすずめが来て食ってしまった。書物を読んで利口になるものなら、このすずめもさだめて利口なすずめになったことであろう。
(昭和七年一月、東京日日新聞)