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こむらたんさい
小村淡彩
宮本 百合子
「女性」1926(大正15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,488 字 · 23 页
「――まあとにかく置いて行って貰おうじゃあありませんか、二三日一緒にいて見ないことにゃあお互に気心も知れないしね」
重次は、
「そのことだ」
と立ち上った。
「なんせ、まだ風(ふう)になれないらしいからどんなもんだか、まあ様子を見てくんなさい」
いしが表を向き、溝川の縁で草を食っていた馬が解かれ、動き出すまで重次と喋っているうちに、せきが、風呂から出て来た。
見なれない女がいるので、せきは始め黙って帯をしめていた。が、その女が新しく目見得に来た女中候補であり、顔立ちも衣服も自分に劣っているのが分ると、徐ろに親しみを持ち始めた。せきは、東北訛のある言葉で、傍から、
「これをお使いなさい」
と団扇を出してすすめた。ろくは、直ぐなつこそうに訊いた。
「あなたここの姐さんですか」
「そうですよ、もう一人いたんだけれど行っちまったの」
「ねえ、私につとまるだろうかね」
「そう沢山お客もないし大丈夫だよ……私が教えてあげるわ。何て名なのお前さん」
「――ろく――ろくってんだけど……ね、あのね」
ろくは、せきにすりよるようにし、真心を顔に現わして訊いた。
「あのね、おかみさんがお嫁にいく世話してくれるって本当だろうか」