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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

等を受領する事枚挙に遑あらず、全県下に於ける模範的の名校長として令名ある人物にして、事件当日は市内三番町の下宿に在ったが、急を聞いて逸早く現場に馳付け、御聖影を取出し、教職員を指揮して重要書類を保護させ、防火に尽力せしめた沈着勇敢な態度は人々の賞讃する処となったが、事後、三番町の下宿に謹慎して何人にも面会せず、怏々として窶れ果てているので、謹厳小心な同校長の平生を知っている人々は皆、その態度に同情している。右につき去る三月二十八日、教務打合せのため、同校長を訪問した同校古参女教員、虎間トラ子女史は同校長の言として左の如き消息を洩らしたと言う。

目下その筋で取調中の事ゆえ、差出た事は言われぬが、自分としてはコンナ不思議な事はないと思う。同廃屋は校内に在るが、午後六時以後は宿直の職員と小使の老夫婦以外には校門の出入を厳重に禁止している。これは自分が特に注意している処であるが、何者が侵入して来てあのような事を仕出かしたものであろう。自分や学校に怨みを抱くような者の心当りもない。むろん学校関係の者とも思われぬので実に心外千万な奇怪事と言うよりほかはない。万事は当局の調査によって判明する事と思うが、とにもかくにもかような怪事件が校内に於て発生した以上、校内の取締に就いて何処かに遺漏が在ったものと考えなければならぬ。