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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
「毎日新聞」毎日新聞社、1949(昭和24)年11月16日~1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 83,234 字 · 160 页
これは一つには、運が悪いだけではなく、何故か相手の人が故意に平中に遇うことを避けているらしいからなので、そのために平中は一層懊れていた。こう云う場合、召使われている女童などを手馴ずけて文の取次をして貰うのが常套手段で、もちろんその辺にぬかりがあるのではなかったが、それも、今日までに二三度持たせて遣ったのに、全然手答えがないのであった。いつも平中は女童を掴まえて、「たしかに渡してくれたかね」と、しつッこく念を押すのであるが、「えゝ、お渡しゝたことはしたんですけれど、………」と、女童は口ごもりながら気の毒そうに平中の顔を見るのである。
「お受け取りにはなったんだね」
「えゝ、たしかにお取りになりましたわ」
「是非御返事を戴きたいと、云ってくれたゞろうね」
「それも、そう申上げたんですけれど………」
「そうしたら?」
「何とも仰っしゃらないんですの」
「でも、お読みにはなったのだろうか」
「えゝ、多分ね、………」
と、平中が問い詰めれば問い詰めるほど、女童はいよ/\当惑するのである。
一度などはこんなことがあった。
例に依ってこま/″\と思いのたけを書き綴ったあとに、せめて私はあなたが此の文を御覧下すったかどうか、それだけでも知りたいのです、決してねんごろな御言葉をとは申しません、御覧になったのなら、見たと云う二文字だけの御返事で