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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

当時、二十代であった、もっとも感受性のつよい青年中野の胸に刻みつけられた幻像は彼の一生を終る日まで消ゆることはなかったであろう。

私は、緒方竹虎が、彼の人間性について論じている次ぎの言葉の中に、中野正剛の真実の姿をハッキリと見透すことが出来る。「(前略)残忍なことを忌むこと中野君より甚しいものはないのである。中野君は一面、勇敢である。何物をも怖れない勇者として知られている。それは確かに事実である。しかし、中野君は、その半面、血を見ることが非常に嫌いであった。中野君ぐらい一生の中にたびたび大手術を受けた人は尠い。その、とどのつまりは左脚を失うにいたったのであるが、それでいて中野君は、他人の手術など、身をふるわして厭がった。民族が民族と血を流し合う戦争など、それだけに中野君が、よろこぶわけがない。太平洋戦争開始の朝、中野君が、いうにいわれぬ憂鬱をかんじたろうことが、私には、はっきりと想像されるのである。戦争が勝つとか敗けるとかよりも、戦争が当然にもたらすであろう戦争の悲惨事については、中野君のヒューメンな心が惻々と動いたからである。軍の中の腐敗情実、少しく気概あり智略ある将領が、次々に退けられてゆく軍の近情を見て、果して戦争が出来るかという危惧もあったろうが、それよりも、本能的に戦争を嫌ったのである。