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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

おそらく、フェリシタ夫人にとっても、これが日本においての、もっとも楽しく、心に銘じて記憶すべき夜であったであろう。

しかし、ロマンチックな、――というよりも、あまりにもロマンチックすぎる童話の中だけにある夢の御殿の幻想は、それから一ト月を保つことも出来ずに、見るも無残にうち砕かれた。

当事者である秀人とフェリシタの傷心は、二人以外の、いかなる他人も関与すべき性質のものではない。この恋愛の破綻と、悲劇的な結末については、何れかの日、秀人自身があらゆるものをさらけだして執筆するときがあるだろう。あっけないといえば、あまりにもあっけなさすぎるが、これを一口にいえば、民族性の上に築きあげられた肉体の不調和ということになるかも知れぬ。

一家の内部に起った事件として、国際恋愛の最後のすがたは、中野正剛が世に時めく革新政治家であるだけに、世間の噂に伴う好奇心に一層拍車をかけた。経済的に無力であった秀人が、ほとんど狂乱状態に陥って、東京市内を恥も外聞もなく荒れまわっているフェリシタを、どう処理していいかわからなくなっているとき、あの悲劇を最小限度にとどめる能力を持っているものは兄の正剛だけである。