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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

「いよいよはじまったんです、――今朝」

こみあげてくる声が咽喉につまって、彼の眼が急に異様な輝きを帯びてきた。

「何がさ?」

と言いながら伍一はわざとらしくつめたい表情をしてみせた。その手に乗るものかという気もちである。しかし、そうは言っても、何時もの、途方もないことをしゃべりだしては伍一の感情を大きくぐらつかせておいてからその隙にうまい口実を見つけだして小遣をせびってゆくときのあの多吉とは少し様子がちがうようでもある。前の晩にやってきた代々木の叔母から、多吉がちかごろ近所の鰻屋の娘に夢中になってそのために方々の知合いに不義理をかさねて困っているという話をさんざん聞かされたあとだったので、多吉の思いつめた真剣な表情にぶつかると伍一はふふんと鼻であしらうような恰好をしないではいられなかった。

「えっ、――ほんとにどうしたんだい?」

「新政府が、――新政府が出来るんですよ、今朝いよいよ」

吐き出すような調子で多吉が声をはずませた。

「新政府?」

「じゃあ――」

と、彼はもどかしそうに、

「知らないんですね、今朝のことを、――総理大臣から要路の大官まで根こそぎにやられたんです。