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やまへかえりゆくちち
山へ帰りゆく父
小川 未明
「中央公論」1923(大正12)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,875 字 · 16 页
どこへ捨ててしまった?」と問いました。
すると、植木屋は、しばらく考えていましたが、
「たしか、ここからの帰り途に、あちらの広い空き地に捨ててしまいました。」と答えたのであります。
その空き地は、もと建物があったのですが、いまはなにもなく草が茫々として生えていました。そして、子供らはその中に遊び、通行する人たちは、近道するために、その空き地を横ぎったのであります。
息子は、どんなに、がっかりしたかしれません。どうしても、その石を忘れることができませんでした。すると、黒い石が、夜露にしっとりと湿れて、広場の中で、月の光に照らされて輝いている夢を見ました。
ふと目をさましますと、外は、ちょうどその夢に見たようないい月夜で、小さな窓が明るく月光に照らされていました。彼は、さっそく、起き上がりました。そして、その広場へ、石が落ちていないかと探しにゆきました。
すっかり秋の景色となって、こおろぎが鳴いていました。うすもやが一面に降りて、建物の間や、林の木の間や、広場の上に渦巻いているようにも見られました。
息子は、あたりが、すでに眠静まった真夜中ごろ、一人広場にやってきますと、はたしてさびしい月の光が、草の葉をば照らしていました。