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しまもり

島守

中 勘助

「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页

青空文庫

二十九日

朝。散りしいた木の葉にまじって翅のはえたいたやの種子が落ちていた。山やまがありったけの風を吹きつくしたかのようにけさは静かである。樫鳥や、木つつきや、島じゅうを木づたい鳴きかわす鳥のなかでひよどりの声がことによく谺にひびく。なに鳥か大杉の梢で玉の梭を投げるように鳴く。湖水にうつる雲の影はしずかにうごき、雑魚の群は吹きかわった新鮮の気を吸うように滑な水面に泡をたてる。

机にもたれたまま夕がたまでうとうとした。そのあいだにいろいろな鳥の声がきこえた。目をさましたら手が痺れてなにを持っても乳のみ子のように落してしまう。

島守の一日の暮しぶりはこうである。朝目がさめるとながいあいだの習慣にしたがって睡後のけだるさが心臓から指の先まですっかりきえてしまうまでは静に床のなかに仰臥している。漸く五体が自分のものになれば起きて南の浜へ顔を洗いにゆく。雨の日やあまり寒い朝は前日に汲んでおく水で用をすます。次には土間の蓄えのうちから一掴みの杉の枯葉とやや生のとを拾い五、六本の木屑をそえて焜炉に火をおこす。生の葉は燃えるときに濃い白い煙をたてるのと、ぱちぱちはぜるのがよくてことさらにまぜるのである。