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びしょう

微笑

豊島 与志雄

「雄弁」1919(大正8)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,995 字 · 43 页

青空文庫

この考えは私達の気に入った。なぜならそういう奴等が居るからこそこの社会が浅薄で形式的で余り融通がきかなすぎて面白くないのだ、と私達は思っていた。

「兎に角こうなったら、一つ素敵な芝居をうってみようじゃありませんか。」と村瀬は云った。

「そうですね。何か名案がありますか。」

「ええ、面白いことがあるんです。」

村瀬は私の耳に囁いた。私はすっかり喜んでしまった。

――あの男は私達の「現行犯」を押えようと思っているに違いない。それで懇意な女を連れて行って、前から手筈を定めてあの歩廊の上で婦人誘惑の芝居を演じることにする。それには彼奴が来ていないと損をするから、次の火曜は休んで、金曜に実行する。もし捉えられても立派に弁解は出来るし、捉えられなくても兎に角素敵な芝居にはなる。

「誰か適当な女は居ませんか。」

「さあ、僕にはありませんがね。」

「では僕が連れて来ましょう。僕の家のすぐ近くのレストーランの女中に、そんなことの好きなのが一人いますから。その代り役者には君がなるんですよ。知った間だと中途で放笑したりなんかすると折角の計画が無駄になりますからね。」

私は承諾した。