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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

そのボックスは後と左右の三面と上下が板張りになっており、客席に向いた正面だけが暗幕のカーテンになっている。その中にイスがあった。術者はそのイスに坐すのであろう。一般にイスに坐して手足を縛りつけるのが例である。この縄をぬけるのは簡単だ。九太夫は十秒前後でできるのである。まるいテーブルの上にはメガホンやハモニカや人形やラッパや土ビンや茶ワンなぞがのせられていた。

「このジュウタンも吉田八十松さんがわざわざ持ってきたのですか」

九太夫はフシギに思って辰男にきくと、

「いいえ、このジュウタンは当家のものです。暗幕と箱とイスとテーブルの上の物品とが術師の物です」

「テーブルは?」

「あれも当家の物です」

テーブルの側面にポータブルがおかれている。それも術師のポータブルであった。術に入る前後に音楽をかけるのである。

すると中央のテーブルにだけは仕掛けがない。九太夫は術師の姿が見える前にその重さをはかってみた。かなり怪力の九太夫が辛うじて両手で持ち上げる重さであるから、ガタガタうごかすぐらいが関の山であろう。

仙七と吉田八十松が現れて席についた。するとその後から糸子がアタフタ現れて、