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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

テーブル上の夜光塗料をぬった品物だけが浮いて見える。

「オーウ」

という遠い山のフクロウのような声がきこえた。はじめて発した吉田八十松の声なのである。するとそれにつづいてポータブルが廻りはじめた。あまりその場にふさわしくないややカン高の音楽であった。

その音楽が終りの方に近づいた一瞬、九太夫にとっては思いがけないことが起った。テーブルの向う側にドーンと重い何かが落下したからである。テーブルの上のものではない。それはそのまままだ動いたものがないからである。かなりの重みの鉄のタマのようなものらしくドーンと落ちてころがったようだ。つづいて、

「キキキキキ、ガガガガガ、ガンガンガン」

しッきりなしに不快きわまる大音を発するものがテーブルの向う側を動きまわりはじめた。これもテーブルの上のものではない。目に見えないものだ。何か子供のオモチャのたぐいであろうか。しかしオモチャの金属質の高音をさらに何倍もけたたましくしたようなもので、怪物どもの泣き声とも笑い声とも怒り声ともとれるような醜怪な音響だ。部屋いっぱいにはね狂うように充満して響きたつのだからたまらない。

「ウム」