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かいむ
怪夢
夢野 久作
「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页
「……何しに来たんだ……貴様は……」
その声は病院中に大きな反響を作ってグルグルまわりながら消え失せて行った。しかし外の私は少しも表情を動かさなかった。診察着のポケットに両手を突込んだまま、依然として基督じみた憂鬱な眼付で見下しつつ、静かな、澄明な声で答えた。
「お前を見舞いに来たんだ」
私はイヨイヨカッとなった。
「……見舞いに来る必要はない。コノ馬鹿野郎……早く帰れ。そうして自分の仕事を勉強しろ……」
そういう私の荒っぽい声の反響を聞いているうちに私は、自分の眼がしらがズウーと熱くなって来るように思った……何故だかわからないまま……しかし外の私はイヨイヨ冷静になったらしく、その薄い唇の隅に微な冷笑を浮かべたのであった。
「お前をこうやって監視するのが、俺の勉強なのだ。お前が完全に発狂すると同時に俺の研究も完成するのだ。……もうジキだと思うんだけれど……」
「おのれ……コノ人非人。キ……貴様はコノ俺を……オ……オモチャにして殺すのか……コ、コ、コノ冷血漢……」
「科学はいつも冷血だ……ハハ……」
相手は白い歯を出して笑った。突然に空を仰いで……嘯くように……。