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かいむ

怪夢

夢野 久作

「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页

青空文庫

街路

……鏡面に映ずる影の通りに……。

私の全神経が強直した。歯の根がカチカチと鳴り出した。

その途端に私の機体が、軽いエア・ポケツに陥ったらしくユラユラと前に傾いた。……と同時に向うの機もユラユラと前に傾いたが、その一刹那に見えた対機のマークは紛れもなく……T11……と読まれたではないか……。

……と思う間もなくその両翼を、こっちと同時に立て直して向うの機は、真正面から一直線に衝突して来たではないか……。

……私はスイッチを切った。

……ベルトを解いた。

……座席から飛び出した。

……パラシュートを開かないまま百米突ほど落ちて行った。

私と同じ姿勢で、パラシュートを開かないまま、弾丸のように落下して行く私そっくりの相手の姿……私そっくりの顔を凝視しながら……。

……はてしもない青空……。

……眩しい太陽……。

……黄色く光る層雲の海……。

街路

大東京の深夜……。

クラブで遊び疲れたあげく、タッタ一人で首垂れて、トボトボと歩きながら自宅の方へ帰りかけた私はフト顔を上げた。そこいら中がパアット明るくなったので……。

……そのトタン……飛び上るようなサイレンの音に、ハッと驚いて飛び退く間もなく、一台の自動車が疾風のように私を追い抜いた。