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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页

青空文庫

車掌の顔には疑惑の色が浮んだ。こいつ怪しい人間だと思ったのであろう。急に真面目な態度になっていった。

「でも、おかしいじゃありませんか、他人の靴をはいて、それに気がつかぬとは?」

「いや、全く申し訳がありません。何しろ……」

「申し訳がないではすみませんよ、こういう間違いは、偶然な間違いとは考えられませぬから」

「でも間違いにちがいないのだから勘弁して下さいよ。わたしは今手洗に行って来ただけです」

「そりゃね、いつもなら、笑ってすまされますけれど、何しろ、今二等車にある事件が起きたのですから、御面倒でも一寸車掌室に来て下さい」

その人は急に顔を蒼くした。

「それじゃ、納得の行くようにここで申し上げよう。実はわたしは、片眼が不自由なんです」

こういって、その人が色眼鏡を取ると、右の眼のつぶれた跡が悲惨な姿をしていたので、私は非常に気の毒な思いがした。

然し車掌はなおも得心しなかった。

「けれど、他人の靴か自分の靴かは足の感じでわかるではありませんか」

「それがその私の左足は義足なんです」

こういって、その人は、洋袴をまくって見せようとしたので、車掌は始めて顔を和げ、