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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
そうしてその妻の死によって、私は折角完成した発明を捨ててしまわなければならなくなりました。何という不思議な運命でしょう。私はその当時の苦しかったこと、楽しかったことを思うと、今でも胸の高鳴るのを覚えます。
いや、思わずも話が傍道に入りましたが、さて、人工心臓の発明にとりかかって見ますと、学生時代に想像したほど、その完成は容易なものではないということがわかりました。そうして私は、恐らく、これ迄、人工心臓の発明を思い立った人はあっても、それを実現することが出来なかったために、文献にも何等の記載が無いのであろうと考えるに至りました。
通常生理学の実験は、先ず手近な蛙について行うのを便利とされて居りますが、人工心臓の実験をするには、蛙はあまりに小さすぎて、細工が仕難いですから、私は家兎に就て実験することに致しました。いやもう、その家兎を幾疋死なせたことでしょう。凡ての実験は必ず家兎を麻酔せしめて行いましたが、いかに人類を救うために企てられた実験とはいえ、今から思えば家兎に対して申訳ない思いが致します。世間の人々は、科学者を無情冷酷な人間と誤解し、実験動物を殺すことに興味を覚えるほどの残忍性を持って居ると思う人もあるようですが、強ちそういう人間ばかりではありません。