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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
こう思うと、静也は試みに、亜砒酸をのんで自殺し、医学そのものを愚弄してやりたいような気にもなった。
ところが段々読んで行くうちに、亜砒酸は激烈なる疝痛を起すものであると知って、少しく心が暗くなって来た。コレラと亜砒酸中毒との区別は主としてこの疝痛の有無によってなされると書かれてあったので、いっそコレラに罹ろうかとも思って見たが、コレラで死んではあまりに平凡な気がしてならなかった。といって激烈な疝痛に悩むのも厭になった。疝痛に悩むのが厭になったばかりでなく、自殺することさえ厭になりかけて来た。
で、彼は図書館を出て、公園を歩いた。白い土埃が二寸も三寸もたまって居て、暑さは呼吸困難を起させるくらいはげしかった。彼は木蔭のベンチに腰を下して、さて、これからどうしたものであろうかと考えて居るとき、ふと、面白い考えが浮んだ。
「自分が死ぬよりも、誰かに代って死んで貰った方が、はるかに楽である」
と、彼は考えたのである。いかにもそれは愉快な考えであった。そう考えると彼はもう自殺するのがすっかり厭になった。自殺しようとした自分の心がおかしくなって来た。そうして急に人を殺して見たくなった。