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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
さて、結婚して半年ほど過ぎたある日のことです。夫婦生活も半年に及ぶと、少くとも私たちのような冒険好きなものに取っては聊か倦怠を覚えざるを得ませんでした。その倦怠を覚えかけたところへ、二十五六になる一人の男が診察を受けに来ました。診察の結果、黴毒の初期だとわかりましたから、その旨を告げると、男は、
「先生、三ヶ月後に僕は結婚しなければなりませんから、それ迄に治して下さい」
と言いました。私はそれをきいて、直ちに、
「それは無謀です。少くとも結婚は一ヶ年御延しなさい。さもなければお嫁さんに伝染します」
と忠告しました。すると男は、
「それが、どうしても延すことの出来ぬ事情ですから、何とか方法を講じて下さい」
と頻りに頼みました。何を頼まれても、こればかりは、どうにも仕様がないので、そのことを告げると、
「仕方がありません。この儘結婚します」と、彼は自暴自棄的に言いました。
私はぞっとしました。私は顔色をかえて、純潔無垢な花嫁に怖しい黴毒をうつすことは人道に反した卑怯な行為であるから、たといどんな事情があろうとも、延期するのが男らしいではないかと懇々と諭すと、彼は却って腹を立てて私に喰ってかかりました。