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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
「私はこの眼鏡の玉の持ち主を知って居るのです」
こう言って康雄は、お豊に逢った顛末を悉く語ってきかせた。
「すると、その眼鏡の玉の持ち主は誰でございますか」
彼女もだんだん乗気になってたずねた。
康雄はあたりを憚かるようにして、声をひくめ、
「市内のある古本屋の主人です」
この言葉をきいた彼女は暫らく考えて居たようであるが、やがてその美しい眼を輝かして、
「若しや古泉堂とかいう古本屋では御座いませぬか」
康雄は驚いた。
「え? え? どうしてあなたはそれを知って居るのですか」
彼女はすぐには返事しなかった。暫らく俯向いて考えて居たが、やがて、決心したもののように顔を上げた。
「もう、何もかもお話し致します」彼女は大きく呼吸した。「今まで口を噤んで居たことはどうぞ御許し下さいませ。私の名は篠田歌代と申します。父はある役所につとめて居まして、四五年前まで両親と私と三人暮しで名古屋に住んで居りましたが、その後父が転任することになって、東京へまいりました。ところが一年たたぬうちに父は病死して、母と二人暮しとなり、差し当り食うには困りませんでしたが、私はタイピストとなって生活の資けと致して居りました。