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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页

青空文庫

里の土産に何貰うた、でんでん太鼓に笙の笛……

美しい、透きとおるような調子に魅せられて、呆然として立って居ると、唄は三度び繰返された。そうして最後の節が風の中へとけこんでしまった時、はじめて私はがく然として我に返って、あたりをながめまわしたが、別に人影らしいものはなく、左手にあたって、石塔のようなものがぼんやり見えるだけだったから、冒険好きな私も、一種異様の恐怖を感じ、寺の庫裏をめがけて、逃げるようにかけつけ、どんどん戸をたたいたのである。

すると中から返事があって、程なく戸をあけてくれたのはこの寺の住職らしい五十ばかりの坊さんであった。坊さんは、あがりがまちに置いたランプの光に照された私の姿を、暫らく怪訝そうに見つめて立って居たので、私は簡単に事情を話して、一夜の宿を乞うたのである。それをきいた坊さんは急にニコニコして、

「それは難儀でしたな、おはいりなさい」と、親切に言って私を入れてくれた。

「こちらへ来なさい。幸い奥の座敷に火がかっかとおきて居るから」といって、坊さんはランプを捧げて、私を坊さんの居間に案内してくれた。六畳の室は火鉢の盛んな火勢でむっとする程暖かく、一隅に、机と本箱とが置かれ、机の上には一冊の和書が開かれたままになって居た。