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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
「新日本」1917(大正6)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页
「いつかの宿屋の伜ですよ、あっしの顔を覚えてるっていうなあ、畜生っ」と言ったが、
「やったなあっしじゃないんですから、行きましょう」と言って、三田はさっさと歩き出した。
二人が見張りに帰って来た時は、見張りの中は、事務員や刑事で一杯になっていた。その中には、現場の見廻りに来た石山の姿も見えた。何時聞き伝えたのか、坑夫は見張りを遠巻きにして立っていた。見張りにいた刑事は、
「此処では何ですから、一寸何処かを拝借したいんですが」と言うと、石山はすぐ、
「製図室があいてます」と口を出した。
「僕が行きましょう」と、池田は刑事と三田を、見張りの下の製図室に案内した。彼は事の真相のわかるまで、刑事の傍を離れたくないと思っていた。
ガランとした湿気臭い製図室に入ると、
「君もかけ給え」と、商人風をした刑事が、三田にも椅子を与えた。
三田は悪びれた風もなく、腰を下すと、後ろには、三人の刑事が囲むように立ってしまった。その中での上役らしい男が、三田の前に腰を下して、
「君は塩子で喧嘩をした相だね」と問い始めた。
「ええ、やりました」と、東京で植木屋や八百屋をしたこともあると言う三田は、威勢よく答えた。