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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

「新日本」1917(大正6)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页

青空文庫

とキッパリ言い放った。

「ではそれでよしとして、一寸塩子まで同行してくれ、検事もまた来ておられるから」

「ええ、行きましょう。だけど、一寸着物を着かえさせておくんなさい」と言った。三田の後ろには、刑事が三人附き添って、製図室を出て行った。

宿屋の伜というのを聞いてから、池田の頭はカッとしてしまった。矢張り彼奴がこの間のことを根に持ってした事だと思うと、全身の血が逆にめぐるような気持ちがした。

卑怯な奴は、何事も自分でしないで人を煽てるのだ。ふだんから塩子の村の者は、この山が発見されたために蒙る利益が、こちらの村にばかり落ることを猜んでいた。その感情を利用して、寅吉をそそのかしたに違いないと思った。何も知らない坑夫なんかに喧嘩を売って、人を殺したり、罪に陥したりして夫れが何になるのだと思うと、彼はその宿屋の伜を、八つ裂きにしてやりたいような気になっていた。

「若し三田が殺したとすると、喧嘩を売らせた宿屋の伜はどうなるんですか」と、池田は取調べをした男に訊いた。

「さあどうなるか、調べた上でなければ分りますまい」とその男は、冷然として答えた。池田は勝手にしろと思った。