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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
いやそればかりではなく、僕とそいつとは、別にはっきりした理由がある訳ではないけれど、何だか目に見えない糸で繋ぎ合されている様な気がして仕方がないのだ。殊に近頃になってこの二三日などは毎晩の様に、あのお化けの夢にうなされている。昼間でもあいつの顔を思出すとゾーッと寒気がして何とも云えぬ厭な気持に襲われるのだ。姉崎家のことを書く前に、僕はなんだかあの片輪者について、もう少し詳しく君に知らせて置き度くなった。そいつの不具の度合は、身体のどの部分よりも顔面に最も著しかった。頭部の肉は顱頂骨が透いて見える程ひからびていて、ビカビカ光る引釣があって、その上全面に一本の毛髪も残っていなかった。木乃伊には毛髪の着いているのもあるが、この乞食の頭は、木乃伊とそっくりな上に髪の毛さえも見当らぬのだ。広く見える額には眉毛がなくて、突然目の窪が薄黒い洞穴になっていた。尤もそれは右の眼の話で、左の眼球丈けは残っていたけれど、細く開いた瞼の中は、黒くはなくて薄白く見えた。僕は左の目も盲目なのかと考えたが、あとになってそれは充分使用に耐えることが分った。目から下の部分は全く不思議なものであった。