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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1933(昭和8)年11月~1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 页
呼びかけられた一寸法師の槌野君は、彼の癖でパッと赤面して、広いおでこの下から、上眼使いに一座をキョロキョロ見廻して、居たたまらない、様子をした。彼は常談に応酬するすべを知らないのだ。
「実に、絶好の、実験だからね。心霊信者が、死ねば、すぐ様、霊界通信の、実験が、始められるのだからね。みんな、姉崎夫人のスピリットを、呼び出したくて、ウズウズして、いるんじゃ、ないかい」
いつも実験の時の外は全く沈黙を守っている熊浦氏が、どうしてこんなにお喋りになったのかと不思議であった。何かよほど昂奮しているのに違いない。
「止し給え。つまらないことを」
黒川先生が、不愉快で耐らないのをじっと我慢している様子で、作った笑顔でおっしゃった。
「これは、常談だ。だが、黒川君、今度は、真面目な、話だが、僕は、昨夜、非常に遅く、十二時頃だった。この裏の、八幡さまの、森の中を、歩いていて、あいつに出くわしたのだよ。二百三高地に、矢絣のお化けにさ」
それを聞くと会員達は皆ハッとして話手の鬚面を見たが、殊に黒川先生は顔色を変えてビクッと身動きされた。僕も真青になる程驚いていたに違いない。