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あくまのでし

悪魔の弟子

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页

青空文庫

六

そうして今となってはただ死ぬか、殺されることによってのみ私に満足を与えることの出来る露子の寝顔をほほえみながら眺めるのでした。

どうです。土田さん、私は立派にあなたの魂をうけついだと云っていいでしょう。

六

然しまだ其の当時は、空想に依って私は妻を殺していたに過ぎなかったのです。之を実行に移そうなどという考えは全く頭にはなかったのでした。

ところが、此処に私にとっては重大な事件が持ち上ったのです。即ち私と石原すえ子との再会です。

女嫌いのあなたは、私が初恋の女を、憎みながらも永く忘れずに思いつづけていたことを嗤うでしょう。けれどそれはあなたと私の性格の相違ですから致し方がありません。私は二十歳の年にすえ子を失っても、いつもいつも彼女のことを思いつづけていたのでした。

従って、私が方々を流浪しつづけていた間も、彼女が嫁いださきの有名な実業家のことを常に注意していたので、其の男が、あの関東の大震災の時無残にも圧死し、彼女を除く外、彼女の里のものまで殆ど全部死んでしまったことを知っていたのです。

しかし、流石に私も男として、自分の方からすえ子を訪ねる気にもならず、又訪ねようにも彼女が何処に住んでいるのかも知らなかったのです。