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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず

憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず

吉野 作造

「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页

青空文庫

こういう立場から、代議政治の効用を疑い初めたのであるが、更に下層の労働者は、従来の経験に徴して、議会が到底労働者の支配の下に来らざることを見、つくづくこの感を深うした。元来下層民衆は、数においては遙かに中流上流を凌駕する。故に彼らは代議政治の下においては自己の代表者を以て容易に議会の多数を占領することを得べしと考え、かくて結束して社会党というものを作ったのである。しかるに実際彼らによって挙げられたる代議士は、その数において思う通り多きを得ざるのみならず、一旦当選をするとその選挙区内の多数者たる労働者よりもむしろその区内の有力なる有産者の左右するところとなりがちである。その外無論いろいろの細かい理由もあるが、ともかく議会によって下層民衆の目的を達せんとする当初の期待は経験上木に縁って魚を求むるよりも困難なる夢想に過ぎないものとなった。ここにおいて彼らは代表の名に惑うて安心するの危険を絶叫し、議会によって自家階級の目的を達せんとするの思想を断じて排斥すべきものなりと叫び、いわゆる「政治反対」の旗印を翻した。「政治反対」とは実は選挙を基礎として立つ一切の政治に反対するということである。