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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
口へ竹の棒を通して、炭火の上でクルクル廻しながら焼くんやね。うち、比島へ行ったから知っとるが、ちっちゃな尻尾を巻いて、三寸人参を銜えたやつが、コンガリと焼けあがって、バナナの葉に載って出てくるよ」
「わかりました。もう結構ですよ」
「いや、まだわかっとらん。まあ、聞きなさい……この家にエルマンという悪いやつがいて、あんたらに検挙られて、マニラへ送還されたが、あれは純粋なポリネシアやから、誰が豚を飼っていたか、推して知るべきでしょう。胡乱なことをいうとるのやない。この家でメードをしとったのが、うちで遊んどるが、それが現実に見とるんや……洋館にいたシュラーがアメリカへ帰ったあとは、独身者ばかりで、パントリーを使わないのをいいことにして、そこで豚を飼っとったらしい。餌をやるのを忘れると、豚がこの広廊をトコトコ歩いて、エルマンの部屋へ催促に来るんやて……見てみなさい。この一面の傷は、タップでもなんでもない。みィんな豚の蹄の痕です。なんぼ接収家屋やかて、神聖なる個人住宅の座敷の中で、不潔な豚をアチコチさせるなんてのは、あまりにも、敗戦国を侮辱したやり方や思うね。