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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

「さようです」

「御所造りの羽目に、五色のペンキを塗ったくったのも? 地境の松の頭をチョン切ったのも?」

「弱ったね……念をおされると、汗が出ますよ」

「汗が出たら拭いておけ。いったい君は、どういう権威をもって、こんな勝手な真似をした?」

太田夫人が割って入った。

「そんな大きな声を出さんといて……こいつも、悪いことをした思うのか、自火を出されたことを聞いて、焼けた分の新築を、無料で奉仕したいというとるんです……今日、伺ったのは、そのことも含めて」

「新築などしないから、奉仕はいらない。あれが焼けてくれたんで、清々しているんだ」

「でも、あそこにケチンがなくっちゃ、住めません」

「広廊へ七輪を持ちだしてやっているから、ご心配はいらない」

「石田さん、こいつは、無料でやる、いうとるんですよ。来年の春ぐらいまでには、収用住宅がみな片付くから、外人向きの貸間ブローカーが、いまから血眼で部屋を探しとる……こいつのサービスで、あそこにケチンをこしらえとけば、階下と二階を、月五万円ずつで貸せますよ。あんたの家族が、御所造りのほうに住む気があるなら、家具を入れて、設営しなおして、収用ハウスに馴れたメードを、一人お世話する……そこまでの奉仕をする気でいるんです。