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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

それはいいが、わが家を収用していた先住者のなかに、徹底的な日本嫌いがいたふうで、鉄線をひきぬいて、そのあとにクレマティスを植えてあるのには、おどろいた。

鉄線は六弁、クレマティスは八弁というだけのちがいで、鉄線とクレマティスはおなじ種の花だが、そうまでしてみたものの、鉄線はとなりの庭にもあって、それに蝶や蜂は自由主義者だから、さかんに日米の花のあいだを飛びまわったのだとみえ、六弁とも八弁ともつかぬ、クレマティスと鉄線の混血児ができかけているのは滑稽だった。

花だけのことではない。わが石田家の家系にも、まさに種の混淆がはじまろうとし、思いがけない手近かなところから、黒い眼をした亜麻毛の息子か、青い眼をした黒毛の娘が飛びだして来そうな形勢で、これがいま、石田家の愁いの種になっている。

六月某日は、ワシントンの白堊館だか議事堂だかの落成記念日だということだったが、このおめでたい日に符節をあわせるように、洋館附属の調理場の再建と、石田一家五人の居住にきめられた、御所造りのほうの家具の備えつけが終った。その名もエンジェルさんという、プロテスタントの天国にふさわしい、おしゃれさんのメードの住込みもきまり、あとは、アメリカから、(たぶん)千々子さまのお手をとりにくる(つもりらしい、)シュラー・ハークネスそのひとの到着