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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
シュラー氏は玄関の前に立って、なつかしそうにあちこちと眺めている。そんなことは、あとでゆっくりやってもらいましょう。百々子はシュラー氏を、ジス・ウェイと千々子さまの部屋へ送りこんでから、賢夫人のところへ行って、
「奴さん、とうとう来ましたよ」と報告した。
約束の三十分がたっても、なんの合図もない。お茶を運ぶふりをして、ようすを見に行くと、シュラー氏と千々子さまは、二メートル以上も離れた椅子にかけ、シュラー氏が千々子さまに、紐育のクリスマスの話をしていた。
「ブルックリンの月が美しくなり、落葉がし、紐育に初雪が降ると、間もなくクリスマスが来るのですね。七面鳥のセミチとパイ・ア・モード……オーヴンのスープ煮込のなかで、玉葱をあしらった野鴨がぐつぐつと音をたてて……」
この調子では、たいした発展は望まれない。いったんひきとって、しばらくしてまた行ってみると、こんどはポートマックの桜の話をしていた。そのあげく、千々子さまに玄関まで送られ、なんのこともなく、ジープで帰って行った。
あのひとはだれなの、とたずねると、千々子さまは、
「シュラーの弟が連絡に来たのよ。