轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
石田氏は昼間の戦闘の疲れで、消耗したように眠ってしまったが、百々子のほうは、ガランとした空家にさしこむ月の光に脅えて、おそくまで寝つけなかった。
十時ごろ、あまり遠くないところで、自動車のとまる軽い車輪の弾みを聞いた。しばらくすると、こんどは広廊のほうで、床に靴底の擦れる特徴のある音がした。
たしかに、人の足音だとわかっているのだが、気が昂ぶっているせいか、怖いという感じはなかった。寝床をぬけだして、裸足で部屋から出てみると、黒いスーツを着た女のひとが、広廊のむこう端を、雲を踏むような足どりで、入り側からさしこむ月の光を浴びながら、洋館につづく渡橋を歩いているのが見えた。
「お父さま、ちょっと起きて」
石田氏は、ギョッとしたように跳ね起きた。
「どうした」
「洋館に、誰か居るんじゃないかしら……なんだか、そんなふうなの」
石田氏は懐中電灯を持って出て行ったが、二十分ほどして、ぶらりと帰ってきた。
「盗るものなんか、なにもありはしないのだ。ぬすっとが入るわけは、なかろうじゃないか」
そういって、寝てしまった。
石田氏の鑑識で、誰も居ないというなら、居ないのだろう。