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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

自分で行って、探してみるほどの興味もないが、あの女のひとは、なぜ、いつもあんなところを歩いているのだろうという疑問が、心について離れなかった。

翌日の昼の部は、千々子さまがなすった。夕方、帰っていらっしゃるなり、百々子に、こうおっしゃった。

「昼の部は、これから、ずっとあたしがやります。こんな狭いところでおし重なっているより、ひとりで空家のほうが、どんなに気持がいいかしれやしない。うるさいから、あなた、もう、当番にいらっしゃらなくていいのよ」

そのときは、なんだとも思わなかったが、あとになって考えると、そのとき、どうしておかしいと気がつかなかったのか、そのほうが、よほどふしぎだった。

六日目の夜は、石田氏と二人で夜の部をやったが、次の朝、五時頃、三人ばかりの国警が踏みこんで来て、ちょっと捕物の風景になった。

結婚詐欺とか、宝石詐欺とか、そういう方面の関係で、日本に居憎くなった、先住の借家人の一人、ワニちゃんこと、エルマンという南方の暑い島の人が、香港へ高飛びしそこなって、次の便待ちをしながら、ずっと洋館の二階に隠れていたのだそうである。

黒いスーツを着た女のひとは、ワニ氏の同類で、夜になると、こっそりと食べものや情報を運んでいたが、女のひとのほうが先に捕まってしまい、ワニ氏は、情報が入らなくなって困ってい