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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

うとは考えられないが、五月の末に、大晦日の話をもちだすような気のまわりようでは、油断がならない。

賢夫人と千々子さまは、トラックの上で、ろくでもない道具をあちこちさせていたので、運よく、聞きつけられずにすんだが、なんともはや、すごいところまで見抜かれたものだと、はっと胸をおさえたのは、百々子だけのことではなかった。石田氏は、運命を予見されたひとの、暗澹たる顔になって、

「いや、それはどうも」

といったきり、これも、ぎっくりと閊えて、つづく言葉もないふうであった。

引越しのゴタゴタがすんで、三日ほどした午後、逆落しの道源寺坂を、谷町のほうへ買物に降りて行くと、貸間探しらしい若い夫婦連れが坂の中途にとまって、崖の上なるわが石田邸を見あげながら、こんなことをいっていた。

「いい家だ。ちゃんと風景になっている」

「あれは、ついこの間、接収解除になった家なの。いま、どんなひとが住んでいるんでしょう、羨ましいわね……高住さんとこが、やはりそうなのよ。お台所のメカニックがすっかり残っていて、とても便利にやっていらっしゃるわ……電気冷蔵庫があって、電気洗濯機があって、お料理は、みな電気調節器のついたレンジとオーヴンでやるの……あなた、聞いていらっしゃる? 調節器を加減しておくと、鶏の丸焼きが仕上るころに、べつなところで、隠元