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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

「あれっ、豚が焼け死んでいる」

と、つんぬけた声をだした。

「居る居る……親豚が一匹に、子豚が六匹……豚の親子心中とはおどろいたね」

鳶がいっしょになって、そんなことをいって騒いでいるところへ、いつもの係長が、えぐい顔をした私服の刑事を連れて乗りこんできた。

「出たかね」

「出ました。豚が黒焦げになって死んで居ります」

「焼死者というのは、豚だったのか」

「はっ、豚でありました」

うちのパパなる石田氏は、五十雄君と二人ですこし離れたところに立って、素袷の懐手で高見の見物をしていたが、二人の会話の調子のよさに釣りこまれて、はははと大きな声で笑った。

係長は、落し戸の壊れたところから首を突っこんで、

「ははァ、ここは食糧室になっていたんだな。むこうの鉄扉で、台所につづいていたわけだ」

などと説明しながら地下室を検分していたが、不審なことでも眼についたのか、刑事と顔を寄せてヒソヒソ話をはじめた。

「内壁のモルタルが焼けていないのに、豚だけが黒焦げになっているというのは、すこし異状だね」

「おかしいです」

「入って見てみよう」

鳶の頭を呼んで、

「頭、すまないが、ここの小屋根のトタン板をひッぺがして、風が通るようにしてくれんか。