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〈わがあいするしじんのでんき〉(ほい)
〈我が愛する詩人の伝記〉(補遺)
室生 犀星
「婦人公論 第四十三巻第五号」1958(昭和33)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,167 字 · 22 页
おれの庭には何も石の造形物は一つもないんだよ、がらがら庭に秋草が乱雑に咲いているだけだ、縁の下には古下駄がころがっているだけだ、何とか庭を作りたいんだが棄石一つないんだからねと、彼は可憐な五輪塔の頭をなでながら傍から離れなかった。私は庭の石類は他人に頒けたことはないが、佐藤の役者のようなのっぺりした顔立ちの、どうかすると鼻毛までつるっと剃らせるという、変につるんこの風貌がさびしくなり、私自身もこれは頒けたくないと思いながらもつい言って了った。これを持って帰る勇気があるんならあげるがね、そうだな三貫五百目から四貫目近くあるんじゃないかね、と、いうと、なあに四貫目くらいならわけがないよと、佐藤は五輪塔を軽々と抱き上げて見せた。大丈夫持てるさ、電車まで持って行くくらいなら訳のないこった、くれるのに決心ついたかあ、庭の物は君は大切にするからなあ、無理してあとで欲しがっても遅いよと彼はいい、私はほかにもあるから頒けようといった。これ一基あれば庭を作る目標が出来たようなものだ、そして私と二人で縄と藁で荷作りをし、佐藤は意気揚々とそんなに重くないよと何度もいい、表通りに少しひょろついて出て行った。